敷引き、10分で分かる敷引きのお話し


 
敷引きとは、入居時に敷金を預けて退去時にいくらかを無条件で差し引くというものです。一般的には家賃の5か月分程度を差し入れることが多いです。

※ 個人で住居としてかりている場合、敷引きできるのは家賃の2ヶ月〜3、5ヶ月までです。
よって敷引きされ残ったお金から原状回復費が差し引かれることになります。
そして傷や汚れをつけた場合の考え方ですが、仮にクロスに汚れをつけた場合で、入居年数が6年の場合、支払う金額は1円になります。1円というのは国土交通省が発表しており住めば住むほどクロスは自然に価値が下がるので入居者の負担も減るということになります。(国土交通省のガイドラインによる借主負担率)

一般的な敷引き契約での正しい精算方法
30万円 ( 敷 金 )
25万円 ( 敷 引 き )
5万円 ( 家 賃 )
この場合、敷引きの25万円は家賃の3,5倍を超えているので貸主は25万円を敷引きとして差し引くことはできず、敷引きは17万5千円までで、敷 金の30万円から17万5千円を差し引き残りの12万5千円からキズや汚れをつけたものがなければ17万5千円が返還され、一部キズや汚れがあればその部分を国土交通省ガイドラインに準じて精算しなければいけません。
敷引きされた17万5千円の中に通常損耗費やハウスクリーニング代は入っています。

※ 事業用(仕事用)としてかりている場合は敷引き金は返還されませんが、敷金から敷引きし残りのお金がある場合で、傷や汚れをつけていなければそのお金は全額返還されます。
敷引きの契約はしたけども1日も入居していない場合は、敷金は満額返ってくる可能性があります。
→ 平成21年6月4日名古屋簡易裁判所敷金償却の判決より

この判決では1日も入居していないので敷金全額仲介手数料全額火災保険料全額家賃保証料全額を全て返しなさいと裁判所は命じました。

 
意味
敷引きの意味は預かりかり金として一度貸主側が預かるということです。そして退去する時は一部を無条件に差し引いて返さないか、一部だけ返すけども残りの金額も補修費やハウスクリーニングで返さないということです。

もっとわかりやすく言えばお金を返さなくてもいいという契約がこの敷引き契約になります。


こんな契約書には注意
敷引き契約は入居時に敷金を何ヶ月分かを預けます。しかし敷金を全額敷引きし、敷金を1円も返さないという契約書があります。
敷金とはそもそも「家賃を滞納した場合の担保金」、「補修費に使用する」と裁判では言われていますが、始めから敷金を1円も返還しないのに敷金として預かり、あたかもお金が返ってくるような表記をして、「結果的には1円も返さない」のはおかしいです。

契約書には敷引き2ヶ月とだけ書き、契約者にしてみれば何のことなのかさっぱりわからず、ましてや「初めて賃貸マンションをかりる方」や「敷引き契約システムのない地域から引っ越してきた方」や「社会人1年生の方」等にはさっぱりわからないと思います。
このような場合、始めから返す気がさらさらないので、敷金ではなく礼金と書かなければいけません。
消費者にとっては、とてもわかりづらい内容の契約方法は場合によって、消費者契約法により契約自体が無効になることもあります。

最高裁裁判所の判断では、

※ 平成23年3月24日最高裁判所判決
家賃の2倍〜3、5倍は敷引きされても仕方ないとの判決。
そしてキズや汚れが汚れがある場合は更に差し引かれるが差し引き方法は国土交通省のガイドラインに準じて工事代金の全てを払う必要はなく40%程度の負担でよい。


※ 平成23年7月12日最高裁判所判決
敷引きは家賃の3、5倍は有効とした。しかし一部の裁判官から反対意見もでた
岡部喜代子裁判官は「契約書の特約は無効」と初めて反対意見を述べた。

敷引き契約について、最高裁判所では上記の経緯があるが契約内容によっては、
今後、敷引き自体が無効であるとする判決がでる可能性もあるので注意深く見守っていきたいです。

敷引きの基本的な考え

Q:敷引きとは具体的にどういう扱いになるのでしょうか?
修繕費等にも当てられないということは礼金扱いになるとうことでしょうか?
A:礼金のようなもので通常損耗費にあてられます。

Q:契約書には敷金となっていますが、修繕費等に当てる分を最初に払っているということにはならないのでしょうか?
A:修繕がある場合の預け金として取り扱われます。

Q:交渉時に返還しなくていいと言ったのですが、礼金としてとは言っていませんし、万が一修繕費が発生して余った金額がある場合に返還しなくてもいいと言ったつもりなのですが、この主張は通らないのでしょうか?
A:敷引き部分については基本的に通らないと考えます。



敷引きケース1
Q:敷金50万円、敷引きが35万円、家賃70,000円ですが敷引きがとても高いように感じます。
フローリングに大きなハガレがあります。喫煙者がいたので、壁紙はかなり汚れています。また、画鋲の穴がかなりついています。障子とふすまに破れがあります。何とか敷引を減らせませんでしょうか。

A:家賃の2ヶ月分〜3、5ヶ月分は敷引きとして返ってきませんが残りのお金は返してもらえます。今回の契約ですと家賃70,000円の3,5ヶ月分(245,000円)以上を敷引きすることはできません。そして残りの255000円からキズや汚れをつけたものがなければ満額返還され、一部キズや汚れがあればその部分を差し引き残りを返してもらうということになります。

敷引きケース2
Q:解約申込書に清掃料及び室内の原状回復費用は賃借人の負担とあります。また敷金20万円で敷引き20万円、よって敷金残金0円となってます。申込書に移転先住所、サイン、印鑑を押す欄があるのですが、記入して提出しないといけないものですか?

A:今回のケースですと敷引きは仕方がないので敷金は返還されませんが、追加費用を支払うのを極力小額にしなければいけません。
清掃費等については借主に支払い義務がないと考えますが、キズや汚れ等をつけた場合は借主が支払わなければいけません。解約申込書については納得できない部分があれば不動産屋に一度電話して聞いてみては如何でしょうか、

敷引きケース3

Q:敷金を返してもらえず困っています。
契約書に敷引3ヶ月分を差し引くとなっていますが、当条項は判例等でもあるように無効旨不動産会社に電話等しましたが、契約したものだから無効にはならないと応じてくれません。
ちなみに、部屋はきれいに使用しており、退去するときも掃除等行い個人でできる限りのことはいたしました。敷引の返還はしてもらえるでしょうか。
A:家賃の2ヶ月分〜3、5ヶ月分は敷引きとして返ってきませんが残りの金額からキズや汚れをつけたものがなければ満額返還され、一部キズや汚れがあればその部分を差し引き残りを返してもらうということになります

敷引きケース4

Q:保証金は800000円で敷引きは400000円とし、約定返還額は400000円とする。
保証金の返還に際し、約定返還額から本契約上の責務全額を控除する。  という契約書 にサインと印鑑を捺しています。この場合、約定返還額の400000円から修理費を引かれた金額しか還って来ないのでしょうか?敷引き400000円は昔とはいえ大きすぎると思うのですが契約なので仕方ないのでしょうか?

A:確かに高いですね、基本的には家賃の3、5倍程度までしか敷引きはできません。今回のケースですと35万は差し引かれ残りの45万から、キズや汚れをつけたものがなければ45万満額返還され、一部キズや汚れがあればその部分を差し引き残りを返してもらうということになります。原状回復費を差し引く場合でも国土交通省のガイドラインを使用しなければいけません。例えばクロスを張替える場合、6年以上入居で1円で済みます。

 

※ 「敷引き」と「敷金償却」の違いにご注意
平成21年6月4日名古屋簡易裁判所の判決では消費者契約法により「敷金償却は無効」と判断し借主にお金を返しなさいとの判決が出されております。よって最高裁で出された敷引き
判決は大阪に限っては商慣習があり仕方がないとされていますが、他県では償却は認められないという判決がでているようです。


絶対に敷引き金を満額返してもらえる場合もあります。
それは、貸主(オーナー)がマンションを建築する際に旧住宅金融公庫(現住宅金融支援機構)に平成19年4月1日以前に申し込み、融資を受け今現在も住宅金融支援機構に返済中の場合、住宅金融公庫法35条、同法施行規則10条よりあらかじめ一定額を償却するという取り決め(敷引き)や短期に退去した場合は敷金の全額を返却しないとする契約は禁じられています。
※上記の確認をする為にはお近くの法務局に行き、建物の登記簿謄本をみると旧住宅金融公庫(現住宅金融支援機構)から借り入れをしているかどうかを確認できます。

敷引き契約は関西方面で始まったシステムですが、地方にも広がり大変問題になっている事案です。
敷引きと同意語で「償却」「退去引金」「保証金償却」が使われる場合もある。

最近では、借主の方に反論させないよう退去時に契約書を返して下さいと述べているようです。勿論この行為は、契約違反です。(貸主・借主1通づつ所有する義務がある為)

国土交通省ガイドラインを盾に支払い義務がないと貸主側に伝えて下さい。それと契約書は退去したあとも借主の所有物です。それを返さない業者は警察に連絡して返還させるようにして下さい。何故、退去したあとも契約書が借主のものかというと、エアコンの例に例えますと、入居中に借主が自費でつけたエアコンは退去したあとも借主の所有物です。よって人のものを不動産屋が勝手に持ち去ることはできませんし、勝手に処分することもできません。仮に処分すると民事では損害賠償責任に問われ、刑事事件では窃盗罪、器物損壊罪等に問われることがあります。

貸主側は、借主の物を保管しなければいけないという法律があります。(民法659条)
民法659条とは
無報酬で寄託を受けた者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う。

仮に退去立会いの際に貸主側にご自分の契約書が渡った場合でも引取りを請求することができます。(民法663条)
民法663条とは
当事者が寄託物の返還の時期を定めなかったときは、受寄者は、いつでもその返還をすることができる。

借主が契約書の所有を放棄する場合は放棄する書類を作成するのが一般的で放棄する書類がなければ半永久的に契約書は借主のものです。

退去立会い時は、なるべくコピーのみを持っていくことをお勧めします。

 
 
 
 

平成17年7月14日の神戸地方裁判所の敷引き事件で裁判所は敷引きの性質(敷引きとは何か)について定義しました。

1、契約成立の謝礼を借主のみに強いることは一方的に負担を負わせることになってしまう
2、毎月の家賃は自然損耗の修繕費用を考慮した上で支払っているので家賃以外で敷引き金から自然損耗費を借主に請求するということは、2重で支払いを請求することになる。
3、更新料とすることはできない
4、入退去に伴い、空室になる期間があるが空室賃料対策とすることはできない
5、賃料を減額しても減額分が敷引き金にはならない

※消費者契約法成立後(2001年4月1日)は殆どの敷引き契約は判例で否定され、借主にお金を返しなさいとの判例が定着しています。
消費者契約法成立前の入居でも契約を更新することにより消契法が適用されます。


阪神大震災で建物が倒壊した場合に、貸主側が敷引き金を支払えとの請求に裁判所は借主に支払い義務がないとした。(最高裁判所判例より)
 


京都地裁が平成21年7月23日敷引き契約は消費者契約法第10条に違反し
借主に全額返還するよう命じた判決が出された。
契約書に署名に署名捺印しても30万円は、借主に負担義務はないと判断し全額を返還するよう命じた。
この裁判で更新料も支払う必要がないとの画期的な判決も出された。



定期建物賃貸借契約の場合Q&A
定期建物賃貸借契約で2年毎に更新(更新料事務手数料15750円)するタイプの物件に約4年住んでおり、今回家主さんの意向で契約更新ができず、やむをえず退去する事になりました。

家主さんとの間にいる仲介の不動産屋の対応が非常に悪く…、「契約書に書いてある」の一点張りで…定期建物賃貸借契約なので引越費用も出してもらえず泣き寝入りしている状態です。

せめて敷金だけでも返還されないかと思い、相談させていただきました。
よろしくお願い致します。

契約書の中で気になっている文章を一部抜粋して記載させていただきます。
乙は建物を明け渡し後、建物の賃貸期間及び損害の程度に係わらず預かり敷金から賃料の3ヶ月分を(畳の表替え、襖、障子の張り替え、カーペット・クロスの貼り替え、ペンキの塗り替え、清掃、後片付け、その他修理及び施設損料の費用として)甲に支払うものとする。
A:敷引き契約ですね。更新料をはらっていないので、最高裁判所の判例にもありますように、差し引かれると考えます。更新料事務手数料は更新料にがいとうしないので厳しいかもしれません。

敷引きの説明がなかった
Q:契約書が3枚あり、全てに敷金としてかかれていました。建物賃貸借契約書に敷引2ヶ月と記載あり、最後の特約事項に解約時に敷金2ヶ月を差し引くこととすると記載がありましたが、この契約書に関しては指示されたところに印鑑を押しただけで説明はなく、初めて部屋を借りる私には敷金だから戻ってくるという考えしかありませんでした。ほかの契約書には残金を返却すると記載ありますが、返さないと言われました。

A:説明がなければ敷引き契約自体が無効になると考えられます。本来であれば業者は説明をして承諾を得てからでなければ署名捺印をもらえないということになっております。
 

ペット敷き引き

契約書の内容を再確認したところ、ペットを飼っていない場合の契約書でも「畳、クロス等すべての張り替えは借主が行う」と書かれておりました。先程、アパ―トのショップの方から連絡が来まして、ペットを飼っていないのであれば、実際は敷き引きの契約となりますので、敷金の18万円で済みますと連絡が来ました。近くの住民に聞いたところ、「この辺は敷き引きが通例で当たり前」との事でした。これで納得をしたほうが宜しいでしょうか?
A:敷き引きの契約であれば18万円は返還されないと考えます。

敷金は返せる額があると言われた

退居の立会い時に、大家さんから『破損等もないし敷金は返せる額がある』と言われました。しかし、実際は数ヶ月たっても音沙汰なく、こちらから催促すると、賃貸契約者条項8項により、敷金は敷引きとして退居時補修に充てさせて頂きました。と書類が届きました。明細を確認したいと伝えましたが『敷引き特約となっている、最高裁の判決を見ろ』との書類が届きました。これはもうどうしようもないのでしょうか。

私は、はじめから返金する気がないのならなぜ返せると言ったのか、明細を確認させてもらうことはできないものなのか、全く腑に落ちません。
何卒ご教授願います。よろしくお願い致します。
A:入居時に礼金を払っているので、敷引きが必ず有効ということにはならない可能性があります。

退去清算書に敷引きと記載があります

敷引き契約について相談です。賃貸物件の退去後に送られてきた「退去清算書」に敷引き135,000円と記載があり、契約当初に支払った敷金が全額引かれて精算されていました。敷引きの金額の内容の内訳などの記載はありませんでした。その他修繕費などの追加請求はありません。
6年5ヶ月住んでいましたが、丁寧に暮らしておりましたし退去時にはできる範囲で掃除を行って引き渡しました。ただし、壁の一部にベットのマットレスのワイヤーが突出し壁に約10cmほどのライン上の傷をつけてしまいました。
いまさらではありますが賃貸借契約書を見返すと、特約事項に「退去時には、敷金より解約金として135,000円を引き当てるものとする。ただし、借主の故意または過失による損傷がある場合、借主は別途その補修費を負担するものとする。」と記載がありました。
確かに契約書に私の捺印をしておりますので契約上問題はないと思うのですが、敷引き特約について契約書を確認するまで認識しておりませんでした。契約時は、私も社会人2年目で一人で初めて部屋探しと契約を行いましたのでよく理解しておりませんでした。このまま仕方がないと諦めるしかありませんか。宜しくお願い致します。補足ですが6年5ヶ月の間に賃貸物件の管理会社が2度変わっています。
A;家賃の3,5か月分を超える分については敷引きされることはないと考えますよ。

現状回復費用が含まれていない低額の家賃に設定してある

退去時に特約事項である敷引の契約に気がつきました。説明は受けてましたがその時は敷引の意味がわかってませんでした。内容は現状回復費用が含まれていない低額の家賃に設定してあるなど書いてあります。最近最終的にかかった現状回復費用の見積書が来ましたが213000円くらいかかったが実費と敷引どちらか安価な方でと契約書に書いてあるので余分な負担はありませんでした。ただ敷金預けても敷引は絶対返ってこない金額と説明受けてないと思いますし、現状回復費用が高すぎると思います。もし取り戻せる可能性があるなら教えて頂けないでしょうか?
A:家賃の3,5倍が上限になりますので原状回復はさらに別のお金で支払うことになります。